
―― タクシー業界に入ったきっかけは?
30代前半まで、調理師として11年間働いていました。
次の職場が決まるまでの“つなぎ”として選んだのが、タクシーの仕事です。
理由は単純で、
近所にタクシー会社があったから。
新聞の折り込みチラシを見て、
「これでいいか」と思ったのが始まりでした。
―― 調理師時代と比べて、どうでしたか?
調理師になった理由も、今思えば単純でした。
「調理師なら食いっぱぐれないだろう」と。
実際、食費はほぼかからず、
生活に困ることはありませんでした。
ただ、
タクシーに関しては完全な未経験。
しかもペーパードライバーでした。
―― 最初は大変でしたか?
正直に言うと、
最初は苦労の連続でした。
事故も多く、
「向いていないのでは」と思った時期もあります。
それでも、
大きな会社の中で、
気の合う仲間に恵まれ、
少しずつ仕事に慣れていきました。
―― 続けることになった理由は?
給料は、調理師時代の倍近くになりました。
加えて、休みの自由度が高かった。
その居心地の良さに惹かれ、
気づけば、何年も経っていました。
今では管理職となり、
車に乗ることはありませんが、
乗務員時代に出会ったお客様が、
今のパートナーになったりと、
人とのつながりも大きく広がりました。
―― 京都については?
もともと、
京都に特別な関心があったわけではありません。
ただ、
何年も市内を走るうちに、
自然と京都のことを知るようになりました。
これは、
この仕事ならではだと思います。
―― 最近のライドシェアについて、どう思いますか?
今話題のライドシェアですが、
タクシーの仕事も、ある意味では
昔からのライドシェアだと思っています。
車を運転し、
お客様を目的地まで送り、
料金をいただく。
そのシンプルさが、
この仕事の本質だと思います。
―― 働き方について教えてください
タクシーの魅力は、
忙しい時期に集中して働き、
閑散期には長期休暇を取れることです。
収入に波はありますが、
年収500~600万円を目標に、
無理のない計画を立ててきました。
調理師時代も、
「自分の店を持ちたい」とは思わなかったように、
タクシーでも個人タクシーを目指すことはありませんでした。
―― 仕事を続けてこれた理由は?
安全第一で、
お客様をきちんと送り届ける。
必要な収入を得る。
そのスタンスを崩さなかったことが、
30年続いた理由だと思っています。
特別な夢や、大きな目標を持っていたわけではありません。
正直に言えば、
どこにでもいる、ごく普通の人間だったと思います。
ただ、
派手なことをしなくても、
才能がなくても、
目の前の仕事を真面目に続けることはできました。
タクシーの仕事は、
何かを成し遂げたい人だけのものではありません。
「大きなことは望まないけれど、
ちゃんと働いて、生活を成り立たせたい」
そんな人にも、現実的に続けられる仕事だと思います。
―― 最後に、これから考えている方へ
好きな仕事に就けるのが理想ですが、
自分に合った仕事は、
最初から分かるとは限りません。
人に勧められたり、
偶然声をかけられたり、
そんな“助け舟”がきっかけになることもあります。
最初は関心がなかった仕事でも、
やってみたら、
意外と自分に合っていた。
そうした偶然が、
人生の大きな転機になることもあると思います。